<これが、俺の抜歯即時埋入のケースや。>
画面を見ると、野崎がこれまで手掛けてきた抜歯即時埋入のケースがフォルダにまとめられている。
要するに、ケースをひけらかして自慢したいんやろう。
そう言えば昔、知り合いの先生数名と電車に乗っている際、内一人がおもむろにタブレットを取り出した。そしてわざわざ血まみれの外科のケースを他の先生に見せ出した。
当然、他の乗客にも見えるようにや。そこまでして自慢したいか?恥ずかしいから一人だけすぐに降車したわ。
聞けば、学会や各種勉強会でたっぷりと発表してるみたいや。
全く、事前準備の大変さを知る身としては頭が下がる思いや。
「凄いやんか、こんな一杯やってるんや。」
一応、合いの手を打っておく。
<これでもまだ一部や。イチブトゼンブや。>
B’zっぽく言ってきた。
「という事は、他にもマヒらせたケースが一杯あるんか?」
<あるかい!マヒったのはこの一例だけや。>
「他の上手くいった華麗なるケースは、今は関係ないやん。早くVシネの続き聞かせてや。」
<その前に、抜歯即時でどうやって骨を作るか、や。>
「勝手にできるんちゃうん?」
<んな訳ないやろ、抜歯をすれば骨は吸収するのみや。>
「フィクスチャーに骨誘導・・・能?あるって言ってたやん。それ埋めたら終いちゃうん?」
<よく覚えとったな。骨誘導能や。周りには、骨伝導能が必要や。>
「何言ってるか全く分かれへんのやけど。」
<勉強不足ちゃうか?全く。>
野崎の鼻が誇らしげに膨れている。もっとおだててやろう。
「分からんもんは勉強しても分からんわ。ちゃんと教えてもろてよろしいか?」
<そうかそうか、よろしいわ。>
そんな事より早くVシネにリバースしてくれ。
<足場の確保や。これにも高度な知識と技術が必要やねんぞ?>
「足場?工事現場みたいな?」
<ちゃう、骨ができる足場や。それをさらに盤石にするのがHAコーティングや。>
「ちょっと何言ってるか分かんない。」
<まあ、要するに骨補填剤の事や。>
「あ、何か聞いたことあるわ。」
<数種類あるけどな。>
「その選択も実力の内ですか?」
<その通りや。俺はバイオオス単体で使っとる。>
「なんそれ。」
<バイオオスってのは、ビーフのボーンや。>
「ビーフ?あぁ、ラッパー同士が楽曲を通してディスりあうことか。」
<なんでやねん。牛の骨や。>
「何がビーフや、それは牛肉や。牛は英語でカウや。カウカウや。ブルや。シカゴ・ブルズや。」
<講釈たれんでもよろしいわ。インプラントの大家もよく使用しとる骨補填剤やぞ?>
「でも、オレやったらそんな骨入れたないわ。牛やろ?オレはヒューマンやで?」
<全く、デンティストの風上にも置けんヤツや。>
・・・野崎がさらに熱を帯びてきた。
