②
西園寺ちゃんは誰よりも指導受けたからな、
萎縮もせず乗り切ったから自信持って指導受けるセンセの味方になったらええやん。
そうシゲタサンに言われて、たまぁ~~に気が向くと手伝いに行くことにしてる。
ほぼ新規指導や。
うちが現れるとまず相手のセンセは目をひん剥く。その後プルプルしながら上から下までウチを眺め、そして顔面蒼白で一度医院の奥にさささーっと隠れてしまい必ずシゲタサンかスドサンに連絡入れる。
『あんなの来たけど大丈夫か?』
ひと言ゆうとく。
お前が大丈夫じゃないからうちが来とんねん。
それがわからんような阿呆は一回被告人にでもなればよろし。
今日も新大阪までキョーコが見送りに来てくれた。そもそもミナミからキタ方面に出たことないうちにとっては新大阪も全くわからん。文字からしたら大阪が新しいんか思ったが見渡しても特に新しい感じもしない。改札の近くでスドさんがブンブン大腕振ってる。
ー 新幹線のチケットこうといたで。
おおきに!高級席??高級なセレブ席?
ー は?自由席や。なにゆーてんねん。
しょっぼ。まぁええわ。新幹線ちゅうもんに早よ乗ってみたいし。あれやろ、南海電車より早いらしいやんけ。南海電車とは小さいころ何回もダッシュで競ったが負け越しやったわ。
でもうちは、いつか追い越す。
うちはなポジティブ思考女やから色々調べてん。シズオカには桜エビのかき揚げ、黒はんぺん、うなぎパイ、シズオカチャ、安倍川もち、のっぽパン、バリ勝男クン、あげ潮、そしてなんと言ってもうなぎの蒲焼!
も~めっちゃええとこや~ん❤︎東京じゃなくても最高な素材が盛りだくさんや。はよいこ。
ー ほなキョーコちゃん行ってくるわ。ヨシコいくで。あっと…
スドさんが改札に入ろうとしたら荷物いっぱいの
パツキンガールとぶつかりそうになっとる。
ー あっ、えっ~っと。ウォーアイニー、あ、ちゃう。えーとフジヤマビューテホー、アンド、ビリケンアットザアベノクゥ
おっさんなにゆーとんねん。ビリケンは浪速区や。
パツキンねぇちゃんが顎で先行けゆーとるやないか。
ー But, your much too loaded down.
キョーコの口から呪文が唱えられた。
へ?なに?なんて?
ー I appreciate it.
パツキンガールがにっこりして改札に入って行った。え?キョーコ?中卒…ちゃうの。
ー 中卒やけどそれくらいは言える。
しれっと横顔でキョーコが答える。
やべえ、また謎が深まった。帰ってきたらこいつの履歴書見返す、あったやろか?いやない。知り合いやからという理由で雇う時は顔パスや。
ー はよいけ。乗り遅れる。
ほんまや、やばい。とりあえずそのシズオカとやらに向かって出発や。あたふたとスドさんと新幹線とやらに乗り込む。
カモノハシ。
新幹線を見た感想、こんなもんが早いんか?
ー おー、今日は空いとるな。
てか、キョーコちゃんて何者や?
いやそれよりもヨシコ。これな今日のクリニックのデータや。まずは取得してる施設基準を把握して新規やから俺が10人のカルテ内容さっと作り上げるからな。ヨシコは他の書類とかみてや。足りないものとかの確認や。チェックシートあるからな、それにチェックしていって欲しい。歯管、実衛指、情イチ、情共、技工指示書に納品書…
わーわーわーわーわーーーーー!
はやっ、はやっ、はやい。
これはさすがのブガッティ・シロンすら追いつけないのでは?南海電車の比じゃない。
しかもめっちゃ椅子もクルクル回るやん。
がちゃん、がちゃん、がちゃーーんっ。
中華料理屋のテーブルみたいやんけ。
うおおおおおおお。
コーヒーも売ってるしじゃがりこも売ってる。しかもご当地じゃがりこ売ってる、買お買おっ。ビールも…
ー あっかーーーーーーん!アホか。仕事や。
そして騒ぐな。しかもこれは『のぞみ』じゃないから遅いほうの新幹線や。んなことも知らんのか。
え、これで遅い方。
んでビールあかん?ならこだわり酒場レモンサワーあるか?
ー あかんて。んで今日行くセンセはな。意識高いんか知らんけどめっちゃ色んな勉強会に所属しとるんや。めんどくさくないとええけどな。
けっ。そんなやつでろくなやつ見たことないわ。
わーわーわー、テーブルもあるやん。すご。
この3人席全部使って横たわって寝るわ。
もう、ベットやん。地元の路上で寝てるおっちゃんらに持って帰ってあげたいわ。いや、うちの歯科医院に持って帰って無配管チェアとして使いたいわ。すごーっ。
ー 頼むで、ヨシコ。ちゃんと手伝ってや。て、寝るんかいっ
ぐぉーーー
ぐぉーーー
ぐぉーーー