ほなみていくで。
選定された10人はまぁええわ。満遍なく選ばれとる。満遍なくとは?
社保、国保、後期高齢者からや。
今回の都道府県番号はシズオカやから『22』や。
はい、おさらいやで。もし予想するとしたらおよそ半年前の社保は『0122』国保は今回は『22』から始まる市町村番号。後期高齢は『3922』に目星をつける。
しかし。ん?なんや『06』もおるな。
これは危険信号が灯る。
あまり選ばれない番号が入るとこれは患者通報かスタッフの通報の可能性が出てくる。
いやいや、新規で通報なんかないやろ思うけど怪しいカルテは要チェケラーせなあかん。
通報による指導は個別も新規もとにかく慎重な対応が必要や。向こうがそもそも不正か不当請求ありきと踏んで意気込んでる場合が多い。高点数なんかよりよっぽどどっしり腰下ろしてやらなあかんで。
さらに具合悪いと、前もって向こうが患者に電話したりして調査しとるからな。これウチも毎回やられたわ、根回しせなあかんよ。
「指導」てのは、行政手続き法に従って行われる。
検査権限は指導にはないから、あなた従う従わないは自由やけど従わないなら監査するねーってなる。
「監査」になると検査権限が発生するからカルテを徹底的に見ることができる。
指導は、おまえ自由やでとか言いつつ銃口を突きつけられてるようなもんや。
さらにゆうとくけども。
指導における「中断」と「中止」は全く違うで。
中断は後日指導再開や。
しかし中止は監査に移行やで。
だから指導対策は力を抜くところと、きっちり締めるところを区別してやらなあかん。
早速スドさんはカルテの所見整理に向かい、うちは10人の書類等のチェックリストのチェックを入れる。
ん?おい、カチャエモン。どこいった?
ー 『そっすうよねぇ、やっぱり内縁上皮の治り方がぁなかなか神かかっててぇ、自分でもこれは勝ちレースだなぁとカチャカチャ。』
いや電話しとる場合か。切れ。はよ。
ー 『にしてもぉ歯周病ってほんと面白い!カチャ。ファーケーションプローブでもう少し診査するんすけどぉ根分岐部の形態の複雑さはぁ…』
ブチっ。
ー 『あっ。ちょっとぉお。サイオンせんせ何するんすかぁカチャカチャ。電話線抜くなんてぇ!』
さいおん、じーーーーや。じ!
うっさい、くだらんことゆうてんと早よこっちの準備一緒にせんかい、殺すぞ。今度は電話線ぶった斬るぞ。そんでもって早くコーヒーだせ。気が利かん。
ー 『あー…コーヒーコーヒー。カチャカチャ。
めんどくさいなぁ、頼んだんだから全部やってくれればいいんだけどなぁ。』
こーゆー院長はおる。たしかにうちらは行ったからにはやるで。きっちり。
けどな、おまえのカルテや。おまえの患者のことや。そこの院長しか分からん事情もある。把握してないと本番フルボッコにされるで。
ほんで施設基準は何とってるんや。
ー 『か強診とってますけどねぇ、新規まではあんまり算定しない方がいいと聞いてしてないんですよぉ。戦略バッチリでしょお?うふふカチャカチャ』
何がバッチリや。萎縮やんけ。うちは萎縮する奴は嫌いや。やったことは取れよ。ほかは医管、咀嚼機能1、CAD、レーザー。
まぁ普通やな。
歯管や実衛指の紙はかきあげとるんか?
ー 『あーっと。カチャカチャ。実衛指はスタッフに書いてもらってぇ。ぼく歯菅書いたことないんすよねぇ。まぁレセコンに入ってるんでそれでいこかなとぉ。』
おー、それでいけいけ。その辺は突っ込まれても知らんわ。突っ込まれたないなら自分の言葉で書けよ。
人数分出せよ。
じゃ、歯管と実地指はチェック。
あ、文書提供の点数もとっとるんか?
ー 『たぶん。』
ほんなら原本患者に渡しとるんか。
ー 『知らない。カチャカチャ』
うん、せやろな。知ってる。なかなかうちと気が合うやないかい。なら写しだけは再発行してもって行かなあかんから書きや。はい次。
日帰りやからサッサと要になるとこだけいくで~。
ー 『サイオン先生てふだん診療されてるんすかぁカチャカチャ。』
なんでや?
んで。じ。さいおん、じー。
ー 『いえ、あはははー。なんか歯医者に見えないんでぇ、ははは。』
何に見える?
ー 『ハンシャ。』
だからそのカチャカチャよこせって。へし折ってやるから。
ー 『お断りしますカチャ。』
