5
患者に出す書類なんかはな、あれやわ。
目をつぶってでもぱぱっとそろえなあかん。
みんなアホみたいにカルテカルテ、カルテを豊富にゆうやん。もちろんそーや。
継続処置には所見を毎回書いて、
外科処置には術式や絵図、
検査したならその時の所見と今後の治療計画は、もう合言葉や。
でもな、とにかく
指導で一寸の狂いも出したらあかんものは、まず
日計表。未収金、過剰金。
そして、技工指示書と納品書と診療録の補綴材料。
診療録と報酬明細書(レセプト)が一致しとるか。
患者に出した明細書や領収書。
金属や薬剤の納品伝票。
そこのカシコの大先生はお分かりか? そうや。
とにもかくにも、『金』が絡むところや。
そらそうやん、金が絡んでないならもうクリアしたもんやで。金の流れがおかしいと全てがおかしくなってくる。
「自主返還」てあるやん。自主やから自由やけどな払わなかったら払わないでずっと返すまで通知くるで。指導では年間33億弱、監査では5億ちょいの返還がある。自主自主ゆうても自主ちゃうくてこれはある意味強制やね。
さてまずきぃつけなあかんのは補綴の材料や。
技工指示書や納品書と明らかにちゃうときやな、
設計も然り。レセプトとズレがあったらあかん。
もーこれだけは耳揃えて技官どの事務官どのに渡さないと。
そーそーそー、こうやってコバルトなのにパラで算定しとったり………ぅうおおおおおいっ!
カチャエモン!どこや!おいっ?
みると若いスタッフ相手にペラペラ立ち話しとる。
ー 『あははははっ、だよねぇ?カチャカチャ。そんな男はダメだよねぇ。やっぱりさぁ女の子にお金出させたらダメだと僕としてはぁ思うんだよねぇ。
女の子の財布を僕はみたことないよぉカチャカチャ。いやいや院長だからじゃなくてぇ昔から女には金を出させない主義っていうやつぅ?カチャ』
ぐぅおらっ!
ー 『グエッ!!!!』
ぅぅうおらぁぁぁあ!
カーーーーン
チョップかましたらカチャエモンの口からリテーナーが飛び出し、それを蹴飛ばしたら
クルクルクルクルクルクルクル~
と回転よろしく綺麗に個室のドアの下に滑り入り込んだ。
ー 『ひぃぃーーーーっ』
ごーーーーーーーるっ!!!
岸和田代表西園寺ヨシコ選手、見事なゴール!
ドミニク・リヴァコヴィッチすら読めないコース。
ブラジルに勝ててもうちの保定装置シュートは止められへんっ、みたか。
ー 『ちょちょ、ちょっと何するんですかぁ!
ひぃぃ、滅菌して!消毒してぇぇ。ひぃぃ。
痛いよお痛いよおっ』
一つ教えといたるわ。
女がこの世で1番嫌いな男は痛がりの男や。あほ。
メリケン赤メガネのくせしてわかったよーな口叩くな。
お前今度くだらんベシャリしとったら、おどれの入れ歯踏み潰すからな。
また出っ歯になったらよろしいわ。
ー 『ぼくはシャクレだったんですぅっ』
知るか。
そんなことよりもや。あんたこの技工指示書と納品書と算定、大いに違うやんけ。そもそもバーとかない設計なのにバーをパラ算定しとるやないかい。
納品書のクラスプはコバルトやぞ。バーもないし。ナイナイづくしや。
どーゆことやねん。
ー 『おやぁ?あれれれれれぇ?あれれれれれぇ。あれ、なんでだどー。』
…こ、い、つ。
ははーん。うちは分かったぞ。
そもそも院長という人種はタイプが分かれる。
①臨床も算定もド真面目。堅苦しい頭とガチガチの臨床にのめり込みすぎてショボいレセプト院長。これはうちらの出番なし。新規は通る。しかし稀になぜか何も分かってないアホ患者に何も分かってない通報されて個別指導に引っかかってしまうなんとなく幸薄タイプ。
②まぁみんなやってるからうちもちょいちょいやるで、そんなにめっちゃ悪いことはしないけどやったからにはキチキチに算定していく院長。でも技官怖いしなぁ、これくらいにしとこタイプ。
まぁ後々レセプト触ったりする人がほとんどやから日計表など未収金が出るが金額的には大したことない。無理をしないタイプ、歯医者の半分がこの部類に属する。
③悪い、もうめっちゃ悪いけど脇が堅い。患者にも上手いことゆうて算定も悪いなーっていうのを見かけるがきっちり根回ししとるから尻尾をなかなか掴めない院長。こちらも唸るような技でかいくぐろうとする。でもまぁ結局そのガードはどこかで破られる、通報がある限り。1割もいないタイプ。
で、
④めっちゃ悪いくせに脇がスースー。もうかなりのワルのくせに甘すぎて甘すぎて危ない橋を渡りまくる院長。そのくせ善人ヅラして知らぬ存ぜぬを通そうとする、偽善者世界選手権第1位に輝くこと間違いなし院長。結局臆病者で泣き顔で頼むからなんとかしてくれタイプ。結構おる。
④が一番厄介であり指導の準備もめんどくさいことになる。
んで、このカチャエモンは④や。
スドさんに早速報告。
スドさん、こいつ④やわ。
④のまさしく本性最強悪玉風、偽善者ヅラ添えで
どうぞお召し上がりくださいてやつや。
ー 『うそやん。まじで?くそ、昼には終わらせてバアムクエヘン買いたかったのにもしかしたらめっちゃくちゃ遅なるんちゃうか。
カルテ整理したらそっちやるさかい、ヨシコある程度踏ん張ってくれ。』
バアムクエヘン?なんやそれ。
で、技工指示書と納品書が全部コバルトや銀合金なのに、補綴の算定は全部パラやで。
これもこれもこれもこれも、や。
踏ん張るどころか足元が崩れる一方。
こら、カチャエモンどーゆことや。
ー 『あっほんとだぁ。うっかりぃ。カチャカチャ。金属って混ざるんかなぁ、パラ少し混ざってたりしたらセーフ?カチャ』
んなもん、混ざるか、あほ。勝手にハイブリッドさすな。
この時点ですぐ中断やぞ。
ー 『いやでもぉなんか毎日患者さんのためにフル回転で働いてるとぉ本当にうっかりしてしまってぇ。時間に追われるっていうんですかぁ。カチャ。』
おまえ、やっぱりそのカチャ装置よこせ。
それを担保にせなこっちはやってやれへん。
はよう。
ー 『お断りしますカチャ。』
