南海なんば駅に到着した。
いわゆるキタと呼ばれる梅田周辺は、どうしても
オレにとってはシティーを強く感じてしまう場所だ。
それよりも、ミナミのこの混沌とした空気の方が
オレには合っている。自然とテンションが上がる。
スイスホテルに繋がるエレベーターに乗り込み、
6階にあるロビーを通過する。
<おはよう!久しぶりやな。>
ラウンジに到着すると、既に野崎が席を確保して
くれていた。窓際の少し奥まった角のとこや。
店内全体を見渡せる、コソコソ話をするには絶好の
ポジションやな。こういう時には望ましい、エエ場
所を押さえている。一つウエノ男やで。
そして当の野崎本人はというと、見た瞬間に目を引
く程こんがり日焼けをしている。
・・・野崎、お前もか。
「おはよう。こちらこそ、久しぶりやな。」
技官として、胸を張り背筋を伸ばして対峙する。
<何か雰囲気変わったやんか。>
「それはお互い様や。そう言うお前は、エラい自信
に満ち溢れてるやないか。」
<まあ、それ程でもないけどな。>
個別指導も含め相談を受ける際は、まず相手に胸襟
を開いてもらう事を心掛けている。
まずはリラックスして頂き、正確な状況という
ものをお話して頂く必要があるからだ。
席に着くと同時に、ウェイトレスからホット
コーヒーが差し出された。
野崎があらかじめ頼んでおき、タイミングをみて
合図してくれた模様や。
ご丁寧に、サンドウィッチも一緒やで。
味なマネを・・・お前は、二つウエノ男に昇格や。
文字通り一息ついたところ、テーブルには既に
何らかの資料が用意されている。
ま、まさか、相談を装ったネズミ講の勧誘ちゃう
やろな?
思わず恋石達也先生のコラムが頭をよぎる。
すると、おもむろにノートパソコンを開いてパノラ
マとデンタル、そしてCT画像を見せてきた。
それぞれ術前、インプラント埋入後、そしてどうや
らインプラント撤去後の画像が展開されている。
良かった、ちゃんとした歯科の相談みたいや。
「いや、ちょっと待ってや。先日の電話ではガマン
汁ばっか出しとったくせに、いきなり本番かいな。
このサンドウィッチ頂いてからでよろしいか?」
<・・・よろしいで。>
うん、旨い。やっぱり朝から頭使う時は朝ごはん食
べなアカンな。いつも朝食を抜いている身としては
、たまに食べる朝飯が堪らないほど美味しく感じる。
「ご馳走様でした。では早速、チェックしていこか。」
一体何のチェックや、と思いつつ上からでも下から
でもない、絶妙な目線でクンロクをかます。
こういう時は、技官としての経験が役に立つ。
<まずは、これらの画像診断からお願いしま。>
何か、昔を思い出してワクワクしてきたで。
