トラブルはいつも突然に

トラブルはいつも突然に~⑨~

  • 再生回数:521

「てか、埋入後のレントゲン見た時に下顎管の損傷

には気付かへんかったんか?」

 

 

<おぅ・・・症例数が豊富なだけに、なんか自信が

漲っててな。何の問題も無いと思い込んでチャラ見

しかしてなかったんや。>

 

 

「他の症例も?」

 

 

<まあな・・・サイナスリフトや再生療法、FGG

やCTGなど勉強会で発表のネタになる症例以外、

力抜いてたのは事実や。>

 

 

「FGG?東京ガールズコレクションの事か?」

 

 

<それはTGCや。フリージンジバルグラフト!

遊離歯肉移植術や。>

 

 

もちろん知っているが、こういうタイプは常にマウ

ントを取りたがるので、とことん担ぐ事にした。

 

 

「あ~、あれか。めっちゃ難儀な事してるやんか。」

 

 

<せや。インプラントにしろ補綴にしろ、角化歯肉

がないと予後不良になってまうからな。>

 

 

「保険の補綴でもやってるん?」

 

 

<もちろん、10万チャージ出来たらな。コンサル

テーションはマストやから、患者次第や。>

 

 

「保険ではやってないんやな。」

 

 

<当たり前や、おれみたいに施術はもちろん、材料

も高価なモノばかり使ってキッチリしてる身にとっ

ては、割に合わへんだけやないか。あ、FOPの保

険算定は、同時にやってるで?>

 

 

・・・二重請求やないか。

 

 

「あ、そうなん?て事は・・・インプラント埋入時

も保険でFOP算定してるん?」

 

 

<もちろんや。だって、切開・剥離して歯肉弁を翻

転しとるんやさかいな。算定してオッケーやろ。>

 

 

意気揚々と鼻を広げて勝ち誇ったように術式を述べ

ている野崎を見て、そういう問題ではない事を胸に秘める。

 

 

悪意がないのは分かる

しかしこれは明らかな、しかも分かりやす過ぎる二重請求だ。

 

 

で、気付かぬうちに患者にチクられるんや。そりゃ

自費で高額な支払いしたと思ったら、何も聞かされ

てない保険請求でガッツリ取られたら、そうなるやろな。

 

 

自費メインで保険を軽視している先生方に多く見ら

れる算定だ。高額なチャージをしている分全く悪気

がないの事が共通した特徴だが、これは立派な不正

請求だ。

 

野崎のリアクションは、個別指導では一発アウトの事例だ。

 

 

てか、現役技官を目の前にして不正請求を自白して

どないすんねん。

 

オレが詳細にチクったら終わりやないか。

 

 

この男、個別指導というものを知らないのか?

 

たとえ自費メインでも、保険医でもある以上は日頃

から頭の片隅に置いて診療する事はマストやで。

いや、自費メインならなおさらか。

 

 

これまでの個別指導での経験で、こういう先生程フ

ァンキーな不当請求や不正請求が多い事を目の当た

りにしてきたからな。で、勤務医がさらに上をいく

算定をしているのがあるあるパターンだ。

 

そして指導終了後、院長は勤務医に、勤務医は院長

に不信感や怒りをぶつけて内部崩壊に陥る。最悪のパターンだ。

 

 

であるからして、このような医院に関わらずスタッ

フ数の多いクリニックは、医院単位での保険算定の

勉強・方向性の統一を早急にして頂きたいところやで。

 

 

もちろん少数精鋭のクリニックも言わずもがな。

 

 

 

野崎から一通りテクニックの講釈が終わったところ

で、赤玉ポートワインをおかわりした。

 

コラムを読む