トラブルはいつも突然に

トラブルはいつも突然に~⑭~

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<結局は、アデホス(神経賦活剤)、コバメチン(ビタミン剤)を3カ月間投与し続けても、麻痺は改善されへんかった。>

 

「何しても効果無かったんか?」

 

<せや、残念ながらな。>

 

「鍼治療や低出力レーザーの照射などおこなった方が回復が早いとの報告もあるで?」

 

<・・・それ、どこの情報や?>

 

「どこやったかな~、どっかのエビデンスで見た記憶があるんやけど・・・」

 

<エビデンスの無駄遣いすな!>

 

「冗談やんか、そないに怒りなや。」

 

<まあしかし、そんなんに効果があるとは思われへんな。>

 

「試してもないのに分かるんか?」

 

<GP(General  Practitioner)としての勘や!俺は自分で治療法を選別しとるんや!>

 

 

 

額に汗をかきながら力説している。心身をすり減らし対応していたのは間違いないだろう。

なおの事、上手くリリースできなかったのかと思ってしまう。

 

勉強のし過ぎも自分の首を絞める事になる、という真理を学んだ気がした。何事も程々に、要領良く確信を突いた道を進む事やな。

 

知らんけど。

 

 

 

「で、肝心の患者はそれからどうなったん?」

 

<ガイドライン通り3カ月粘ってから、大学病院の口腔外科に紹介した。>

 

「粘り過ぎちゃうか。もっと早くリリースした方が良かったんちゃうか?」

 

<だからガイドラインに則った、て言っとるやないか!文句があるならガイドラインに言えや!>

 

 

ガイドラインに八つ当たりすな。あれはあくまで書いてるだけや。盲信し過ぎるのは問題やで。

 

 

 

大人になってから他人のせいにしても、大抵の場合は何の解決にもならない。

 

結局は、自分の責任という事だ。潔く腹を括って覚悟を決めなければ、目の前の野崎のように泥沼に嵌ってしまうという事だろう。

 

自分の知識や技術を過信したり、患者のために尽くす優しさを出し過ぎると、却って自分の首を絞めて患者の不利益にも繋がってしまうという事か。

 

 

冷静と情熱の間とは、良く言ったもんや。

 

 

「大学病院に行ってからはどうなったんや?麻痺は治ったんか?」

 

<それがな・・・>

 

 

 

【ガチャリ】

 

 

 

その時、喫茶店のドアが開いた。単なる新規の客かと思ったが、そちらを見た野崎の顔が引きつっている。こういう時は、絶対に振り向いて相手を見てはいけないというのがお約束だが、好奇心が勝りすぎてしまい、ついチラ見してしまった。

 

 

斜め45度に陣取っていたミナミの帝王レディースの元に、ガチの萬田銀次郎みたいなヤ○ザがやってきた。一目見ればそれと分かる。なぜなら、目つきが堅気のそれとは違い過ぎるからだ。

 

 

目の前の野崎を見ると、引きつりを通り越しひきつけを起こしそうな状態や。

 

こ、これはアカン!

 

 

急いで会計を済ませ、店を出る。野崎は過呼吸を起こしているが、徐々に落ち着いてきた。

 

いくら何でも、リアクションでか過ぎや・・・しかし、何かのトラウマが蘇ったかのようにも見える。マヒった患者との間に特殊なトラブルでもあったんか・・・?

 

 

非常に気になるところだが、とりあえずまた店を変えなアカン。

 

面倒臭いと思いつつも、ひとまず歩を進めた。

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