「で?浸麻はちゃんとできたんか?」
<当たり前や。>
「そう言えば昔、〔浸麻が痛い勤務医はクビや!〕て言ってた先生おられたな。」
<エエ事言うやないか、それこそ歯科医師の基本やぞ?患者様を痛がらせる先生はクビでよろしいわ。>
「そう言った尻から、ビクゥ!てさせとるやないか。」
<それは、あのVシネのせいや。>
「他人のせいにしても何もエエ事あらへん。全ては自分が源泉や。」
<言ってくれるやないか、お前は患者様を痛がらせた事は一回も無いんか?えぇ?>
今度は負のマウントを取りに来た。
そう言えばまだペーペーの頃、とある女性患者を診た時の事を思い出した。
その患者は支台歯形成の際、やたらと舌を動かしていた。
下顎右側大臼歯部の形成を行おうとタービンを持って行きフットペダルを踏んだ瞬間・・・
ダイヤモンドバーの回転に合わせたかのように舌を持ってきた。
次の瞬間、{何してくれてんねん!}という怒号が院内に響き渡った。
お前が勝手に舌もって来たんやろが!と言う間もなく、そいつの旦那が診療室に殴り込んできた。
・・・罠に嵌ったで。美人局・歯科医院バージョンや。
知らんけど。
とにかく大声で怒鳴るわ、脅しにかかってくるわ、院内を荒らすわ・・・一言で表現するとクンロクや。
大変やったんや。後始末がな。
まあ、二人揃って然るべき処理はしたから何も無かったんやけど。
どんな処理かって?・・・ここでは言われへんわ。
まあ、毒を以て毒を制す、てヤツやな。
知らんけど。
目の前の野崎を見て、この話はしないようにしておいた。
調子に乗って絡まれるのも面倒臭いからな。
「もちろん、痛がらせた事はあるけど・・・」
<それ見た事か、皆通る道なんや!>
テキト―に話を合わせておいた。本題はここではないからな。
「無事、浸麻は完了したんやな。」
<せや。>
「伝麻はせんかった、て言ってたけど。」
<おう、インプラント埋入で伝麻なんかする必要ないからな。>
「そんな事言って、あのVシネにビビってたんちゃうんか?」
<アホ抜かせや。あんなヤツにビビって、インプラントロジストやってられるかい!>
「だからって、わざわざ自分からババ引きにいかんでよろしいやん。」
<ババちゃう!オマケで付いてきただけや。>
「そのオマケに現在進行形で絡まれとるのはどこのどいつや。」
<まだそこまで話は進んでへん。なぜなら、まだ浸麻をしただけやからな。>
浸麻するだけで、一体どれだけの話数を使っとるんや。
「で、そこからの処置は?」
